忍者ブログ

***

はじめましての方はCategoryの【ABOUT THIS BLOG】をどうぞ!

Calendar

04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

mail

何かありましたらお気軽にどうぞ!

名前と本文は必須、お返事はメールか日記で行います!
Powered by NINJA TOOLS

***

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

研究のこと



中学生の頃、「見つける人になること」という作文を書いた。
当時の私には「盲導犬訓練士になる」という将来の夢があって
仙台の訓練センターに見学に行った話から始まって、もっと視野を広く、色んな物事に気づきを得ることの出来る人になっていきたい、というような内容だった(ハズ)。

高校生になってからは生物学が楽しかった。
美術部で描く絵は生き物や生物学をモチーフにしたものが多かった。

中でも中二病の私は「アポトーシス・プログラム細胞死」に激しく心を揺さぶられた。
約束された死、約束された消失。それはなんて悲しい約束だろうか。と心の中で物語が爆発していた。
そうして生まれた絵がこの記事に貼ってある物。
懐かしい。他人からは対して評価されなかったけれど、お気に入り。

盲導犬の訓練士学校に行くか、大学に進学するかで悩んだ。
親や担任の勧めに従って、結局大学進学を選んだ。大学でしか学べない経験があるから、と。

推薦入試でぬるっと合格して、ポンツカに喜びのメールを送る。
「合格できました。生物学を頑張ります。」と書いたら、メールが読まれた。
「がんばってね、新しい生物を発見したら、また教えてくださいね」って、ちゃまかふじくんが言っていた。
アポトーシスや再生医療に興味があったので「いや、まあ、発見するって感じでもないんだけどね~」なんて思っていた。

大学2年の夏、臨海実習で偶然「顎口動物」に出会う。
世界的にもマイナーな生物。いないことは無いだろうけど、日本からは正式な記録もない。
何年も臨海実習で生き物探しをしている先生も、まだ見たことが無いという。
それが、私が吸い取ったスポイトの一滴から見つかった。
ヘンテコな、何にも考えてなさそうな、小さな小さな生き物だった。
ぶよぶよしていて、すい~っと滑るように動いていく、ミミズみたいな形の、生き物。

先生の感動ぶりにわたしも触発される。
「これ、日本初記録になるよ、これやったら、その瞬間から第一人者になれるよ」
なんて本気と冗談が混じったような先生のセリフにその気になる。
私がやらなきゃ誰がやるだろうか、こんなマイナーな生物。

現時点で98種が既記載の小さな動物門。海産で自由生活の微小間隙性生物。
口から繋がる咽頭の中に「顎」を持っているのが特徴。
どの先生も知らない。そんな生き物。研究室の担当教員の先生だけがかすかな希望。
3年の夏も4年の夏も臨海実習に着いていって、ひたすら採集。

採ってきたサンプルを観察し始める。
実は扁形動物なんじゃないか?というような紛らわしいやつらが沢山いる。
どれが顎口動物が、図鑑を見ようにもそんなものは無い。
知りたければ自分で記載論文を漁ってみるしかない。
人に聞いてみても、正確なことはわからない。たぶん、が積み重なる。


だんだん心細くなってくる。
ほんとにこいつらは顎口動物なんだろうか?
自分が一生懸命顕微鏡を通して見ている世界はなんなんだろうか?
分からない、わからない。合っているのか?間違っているのか?

論文も沢山沢山積み重なる。重要な資料に限って、一ミリも学んだことの無いドイツ語だったりする。焦る。時間がかかる。ほかにもやることはある。う~ん。嫌になる。

そもそも顎が見えない!焦る焦る。
ほんとうにそれが顎口動物だって言えるのか?と他の人に迫られて、口ごもってしまう自分が情けなくなる。
卒業研究の締切は数か月後に迫っている。
その前に中間発表みたいなものもある。結果が出せるのか?焦る、焦る。




そして今日。
顕微鏡写真を見返していたら、あった。
顎口動物が顎口動物たる所以、「顎」が映っていた。
嬉しさで涙がでる。
もっと早くに見つかっていたはずかもしれない、わたしがトロいだけだったかもしれない
でも嬉しい。やっと見つかった。やっと確実に言える。これは、顎口動物です。

まだまだこれからだけど、やらねば。
卒研発表会は2月14日。どの程度まで研究を詰めて行けるか。
やるべきことはいっぱい。

でも今、日本で一番顎口動物のことを考えているのは私だろう。
来年は就職してしまうから、限られた時間の中で精一杯やるしかない。


未記載種を見つけたら、ぽんつかにお便りを出そう。
知らぬ間に、ある意味「見つける人」に近いことをやっている。
視野を広く。深く深く。

拍手[0回]

PR

Comments

Comment Form